意外に思われるかもしれませんが、私が初めて履いたECCOのシューズはランニングシューズでした。自分が編集長を務めているランニングギアマガジンの「Runners Pulse ランナーズパルス」は今年の2月22日に発売された号が4号目で、1号は2014年の12月に発行されましたが、実はその前に同コンセプトの内容にて「Running Gear Master」の名前で2013年の11月に発売しており、そのなかのランニングシューズインプレッションコーナー「走ればわかるさ!」においてECCOのBIOM EVO RACERをピックアップ。その機能性や使用している素材の品質の高さetc.に魅了されていたのです。下記はその際のレビューになります。
“エコーというとかつてはカジュアルシューズ、最近ではゴルフシューズやスタイリッシュな女性向けフットウェアコレクションのイメージが強いかもしれないが、機能性の高いランニングシューズも人気上昇中である。そんなエコーだが、スポーツシューズ業界の他ブランドが契約工場での生産を進めるなか、同社はあくまで自社生産にこだわっている。アッパーの縫製やソールとの一体化はもちろんのこと、アッパーに使用するレザーも自らのタンナーで生産しており、同社の品質管理は世界屈指のレベルにある。
同社のランニングカテゴリーのキーモデルとなるバイオムエヴォレーサーは、足なじみのよさと耐久性を両立したヤクレザーをアッパーに使用しており、履くほどにシューズは足の一部のようになる。ヤクは寒冷地で育つことから成長がゆっくりで、皮革の組織が密に詰まっているので、通常のレザーよりも長持ちするというが、このことは何度か履いて走ってみて感じられた。足を優しく包む柔軟性はあるのに型崩れする様子がないのである。一方でナチュラルタイプのソールユニットは接地感が脚部にダイレクトに伝わるなど、アッパーのスペックとは対極にあり、1足のシューズで二面性を持ち合わせている点が興味深い。”
このように高い評価を与え、足なじみがよいのに耐久性の高いヤクレザーのアッパー、自然な足の動きを妨げないナチュラルモーションのソールユニットを組み合わせたこのシューズをしばらくヘビーローテーションで履いていたのは懐かしい思い出です。そんなBIOMですが、しばらくするとランニングカテゴリーでは展開が無くなってしまいました。個人的に気に入っていたシューズだったので残念でしたが、「一般的なランナーは保守的だからECCOが考えていたことはちょっと早すぎたのかもしれないなぁ…」と思ったものです。それからは自分にとってのECCOはO2やCOOL 2.0といったGORE-TEX SURROUNDを採用した防水透湿性に優れた長距離を歩いても快適なウォーキングシューズとなり、これらのモデルがヘビーローテーションとなるとともに、BIOMのことは忘れかけていました。
それからしばらく経過した昨年の秋、ECCOのショールームに遊びに行くと懐かしいフォルムのシューズが。そうです、自分が大好きだったBIOMです。ただし昔のBIOMと違うのは、プレミアムレザーをインディゴで染めた、ECCO TRUE INDIGOのレザーをアッパーに採用し、ライフスタイルシーンで活躍しそうなテイストにアレンジされていたこと。実際試してみると、レザーライニングによるアッパーのフィット感や、段差のほとんど無いシューズ内部の構造、ヒール部分のホールド性の高さ、ソールユニットの地面との近さが生む接地感がダイレクトに伝わること等々、あのときのまま。
大好きなシューズだったので、改めて着用することができ嬉しい機会となりました。以前SCINAPSEの回でも書いたように、フワフワした感覚のソールだと力が横方向に逃げてしまって歩く際に非効率なのですが、BIOMのソールユニットは他のECCOのシューズ同様に柔らかすぎず硬すぎないから歩行時の脚力を効率よく路面に伝えてくれ、ホントに歩きやすいし、長時間の歩行でも疲れにくい。もちろん軽いジョギングなら対応してくれるので、旅先に持っていけばカジュアルシーンからエクササイズまで対応してくれますね。
スタイリングに関しては、このデニムカラーのBIOM STREETは、個人的にはホワイトジーンズやショーツとコーディネートするのがオススメ。ジーンズのサイズパッチを想起させるヒールタブのカラーリングなど、細部のディテールにもこだわっています。そしてひとつとして同じカラーが存在しないというECCO TRUE INDIGOのレザーは、お気に入りのジーンズのように履きこむほどに、時間と共に変化し、様々な色の深さや色褪せ感、色ムラ感で楽しめるコレクションになっています。自分もこのBIOM STREETと長く付き合ってその経年変化を楽しみつつ、自分だけの1足に仕上げたいと思います。