Vol.2 ECCO CREPETRAY

スタイリッシュなデザインと機能性を高次元で融合することで、ワールドワイドで高い評価を得ているシューズブランドのECCO。これまでに1000足を超えるシューズを履いてきたフリージャーナリストの南井正弘氏が、そんなのシューズを実際に履いてその魅力を紹介するstyle and comfort。第二回はクレープソールを使用したカジュアルテイストの1足、CREPETRAYをピックアップしました。

クレープソールと聞いてシューズ好きな人ならデザートブーツなどに使われているラテックス(天然ゴム)をベースにした柔軟なアウトソールのことを思い出すでしょう。ワークブーツに使用される、波状のパターンが刻まれた乳白色の合成ゴム製アウトソールのこともクレープソールと呼ぶので、ちょっぴりややこしいのですが、今回は前者の天然ゴムベースのクレープソールのことを取り上げたいと思います。このクレープソールですが、見た目がカジュアルテイストで、様々なボトムスにコーディネートしやすいということと、機能面ではその弾力性からクッション性もよくて、長時間履いていても疲れにくい、ソール表面の不規則な凹凸は、意外とグリップ性が高いという利点があります。

一方で一般的な合成ゴムのソールよりも重い、石油系の溶剤やガソリンに触れると溶けてしまう、冬季のような寒冷時は、弾力性があった春夏シーズンがウソのようにカチカチに硬くなってしまうという欠点もあり、実際に自分の友人がセルフのガソリンスタンドでガソリンの雫がデザートブーツのクレープソールに触れたために、片方のソールが溶けてしまったということを聞きましたし、自分も冬の寒い日にデザートブーツを履こうとしたら石のように硬くなっていて、履くのを諦めたこともありました。

このように一長一短のあるクレープソールは、一昔前と比べると使用するシューズも若干減ったような気がしますが、ECCOは最新技術を駆使することで、この伝統的な素材に再びスポットライトを集めることに成功しました。それが新クレープソールを搭載したCREPETRAY(クレープトレイ)です。

この製造手法は、ECCOのFLUIDFORM(フルイドフォルム)という革新的なダイレクトインジェクション製法によりトレイ状のクレープソールラバー内に独自のポリウレタンを流し込み、レザーアッパーと一体に成型することによって、従来のクレープソールにはない軽量性と快適性を実現しています。また今年の冬は例年以上に寒さが厳しかったですが、CREPETRAYのアウトソール部分は一般的なクレープソールと異なり、硬くなることもなく、柔軟性をしっかりとキープしてくれていました。

今回自分が履いたCREPETRAYは3アイレットのダービースタイルに、履くほどに足になじむキャメルヌバックレザーをミックス。キャメル(ラクダ)の皮革は耐久性にも優れており、長く履いても伸びすぎることがないのもいいですね。ECCOは自社でレザーの製造工場も有しているだけに、本当に使用している皮革の品質が高い。このことはシューズ業界でも一目置かれています。

また使用したインソールはクッション性がいいので、長時間の歩行でも疲れにくいのと、表面が天然皮革になっていて、履くほどに足のかたちに窪んでいくので、インソールをカスタムオーダーしたかのようにフィットしてくれます。このインソールと足の凹凸を再現したフットベッドが一緒になり類を見ない履き心地が得られます。それと外観の特徴としてはヒールストラップとアーチ部分にヌメ皮を使用していることが挙げられ、デザイン上の絶妙なアクセントになっていますね。

ECCOのCREPETRAYのメンズは、デザートブーツカヌーモックダービー(短靴)のバリエーションをラインアップし、ウイメンズデザートブーツダービーエスパドリーユが展開されています。自分が今回セレクトしたダービースタイルナバホブラウンのカラーリングは、第一印象ではシューズ単体で見るとシンプルで目立たないと思いましたが、濃い目のインディゴカラーのデニムと合わせると、お互いが刺激し合って、さっきまでのプレーンな雰囲気がウソのように輝いて見えます。

個人的にはこのコーディネートがベストマッチだと思いましたが、このデザイン&カラーリングは汎用性が高いので、グレーのウールパンツやチノパン、履きこんだジーンズとも相性がよさそう。暖かくなったらショーツと合わせるのもいいでしょう。ECCOのCREPETRAYは季節を問わず、一年中活躍してくれる1足だと思いますよ。

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南井 正弘 : フリージャーナリスト

1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。
「Running Style」「フイナム」「Number Do」「モノマガジン」「デジモノステーション」「SHOES MASTER」を始めとした雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆しており、ランニングギアマガジン&ランニング関連ポータルサイトの「Runners Pulse」の編集長も務める。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間52分00秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。