Vol.9 ECCO ST.1

スタイリッシュなデザインと機能性を高次元で融合することで、ワールドワイドで高い評価を得ているシューズブランドのECCO。これまでに1,000足を超えるシューズを履いてきたフリージャーナリストの南井正弘氏が、そんなECCOのシューズを実際に履いてその魅力を紹介する”style and comfort”。第9回はドレスシューズに使用するレベルのアッパーレザーを使用したスタイリッシュなカジュアルスニーカーである ECCO ST.1シリーズです。

コンフォートシューズという言葉があります。その名の通り快適性を第一に考慮したフットウェアであり、旧来のドレスシューズやカジュアルシューズと比較すると履き心地がよく、その多くは買ったその日から足にフィットしてくれるので、履きならし期間をほとんど必要としません。というわけで、長時間歩くビジネスマンや、デスクワークではなく、立ち仕事に従事する人々にとって、これらコンフォートシューズは無くてはならない存在となっています。

そんなコンフォートシューズですが、そのデザインが垢抜けないといった声も少なくありませんでした。実際、洗練されたボトムスや細部のディテールや生地の品質にまでこだわったスーツとコーディネートするには野暮ったいフォルムのプロダクトは少なくなかったです。

そんな状況を変革したブランドのひとつがECCOです。同ブランドのデザイン部門を統括するニキ・テステンセンが「シューズ業界では、一般的にスタイルとコンフォートを両立させることは難しいと言われていますが、現在のECCOでは、この二つの要素を高いレベルでミックスさせることはマストになっています」とコメントしていたように、ECCOというブランドがここ数シーズン、快適な履き心地だけでなく、スタイリッシュなデザインを採用することでファッションシーンでも注目を集めていることは、このコラムでも紹介してきました。

今回ピックアップしたECCO ST.1のシリーズは、そんなECCOのプロダクトラインアップのなかでも特にスタイリッシュかつラグジュアリーな1足に仕上がっていると思います。それが証拠に、このシューズを履いているときに会った知り合いに「○○○○のスニーカーですよね?」と某モードブランドのスニーカーと間違えられたのです。また高級紳士靴に一家言ある友人には「そのスニーカーの皮革は肌理(キメ)が細かくていいツヤしてるね!ドレスシューズに使ってもおかしくないレベルのレザーだよ!」とも。

それくらいECCO ST.1というシューズが醸し出す雰囲気は、ファッションスニーカーとしても高いレベルにあるということが言えるでしょう。またコーディネートに関してはデニムやチノパンツ、スウェットパンツといったカジュアルな装いにマッチすると思いますが、前述のように上質な天然皮革をアッパーに使用しているので、秋が深まる頃にはウールフランネルのようなドレッシーで高級感ある素材のパンツとコーディネートしてもマッチしますし、ジャケットを着てタイドアップしてもキマルと思います。ある程度カジュアルな服装が許されている職場ならビジネスシーンでも活躍してくれるでしょう。

ECCO ST.1のシリーズは、もちろんECCOがリリースするシューズなので履き心地や歩きやすさのほうもトップレベル。フルイドフォルムと呼ばれる独自のダイレクトインジェクション製法による構造は、適度なクッション性と反発性を確保しています。そのミッドソール部分の硬度は、硬度計で計測したわけではありませんがCOOL 2.0より柔らかく、EXOSTRIKEより硬いレベルに感じました。

このシューズを履いて長時間歩く機会がありましたが、路面に脚力を的確に伝達してくれ、本当に歩きやすい。さらにヒール部分に衝撃吸収を更に進化させたECCO SHOCK THRUという機能をビジブルで搭載していて、このテクノロジーは柔らかすぎることがないので、脚力の路面への伝達を損なうことなく、しっかりと着地の衝撃から足を保護してくれることが体感できます。このようにECCO ST.1シリーズは、コンフォートシューズしても高い完成度を誇っているのです。

また、今回自分がトライしたECCO ST.1は、モデル名にWITH ZIPとある通りアッパーに止水ジッパーを配しており、着脱が簡単で、欧米と違って靴の脱ぎ履きの機会の多い日本では、この構造は本当に便利ですね。

南井 正弘 : フリージャーナリスト

1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツシューズブランドのプロダクト担当として10年勤務後ライターに転身。
「Running Style」「フイナム」「Number Do」「モノマガジン」「デジモノステーション」「SHOES MASTER」を始めとした雑誌やウェブ媒体においてスポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズに関する記事を中心に執筆しており、ランニングギアマガジン&ランニング関連ポータルサイトの「Runners Pulse」の編集長も務める。主な著書に「スニーカースタイル」「NIKE AIR BOOK」などがある。「楽しく走る!」をモットーに、ほぼ毎日走るファンランナー。ベストタイムはフルマラソンが3時間52分00秒、ハーフマラソンが1時間38分55秒。