このコラムの第3回でBIOM STREETのことを紹介しましたが、今回ピックアップしたのは、同じくBIOMコンセプトを現代に蘇らせたBIOM Cです。BIOMは、2009年に当時トップレベルにあったデンマークのトライアスロン選手とECCOが共同で開発したスポーツシューズコンセプトで、人間本来の素足に近い走り心地を提供することにより、数多くのアスリートを魅了することに成功しました。
現在はその活躍の場をストリートに移し、根強い人気をキープしています。デビュー当時ランニングカテゴリーでは、トップアスリートに向けたBIOM A、中級レベルランナーにマッチしたBIOM Bといったバリエーションも存在しましたが、このBIOM Cは、2010年スプリングシーズンにBIOMのランニング向けラインアップのなかでは最もゆっくりしたペースにマッチしたモデルとして追加リリースされ、スロージョグやウォーキングに最適な1足でした。
そんなBIOM Cが、一般的にはドレスシューズにしか使用されることのなかった繊維が密に詰まった上質なカーフレザーをアッパーに採用してリバイバルしました。そのスポーティな佇まいと高級感溢れるアッパーレザーの組み合わせのミスマッチは、アスレジャースタイルが市民権を得つつある日本のマーケットでも好意的に受け入れられそうです。
実際に足を入れてみると、高級革靴を初めておろしたときのような感覚。これまで着用してきたECCOシューズは足を優しく包み込むような履き心地だったのに対して、このBIOM Cは、若干の硬さを感じますが、それは決してネガティブな感覚ではありません。しっかりと足を守ってくれるような感覚です。
ライニング部分は、種類の異なる天然皮革を用いることで、フィット感の向上と滑り防止を追求。インソールの表面にも天然皮革を貼り、このスペックが高級感のある履き心地を提供してくれ、3時間ほど歩き回ったあと、このインソールを確認すると、足のかたちに窪んでいて、より足にフィットしてくれました。
ソールユニットはECCO独自のFLUIDFORM(ダイレクトインジェクション製法)で、一体成型によるポリウレタン/ラバーの二層構造。しばらく歩いてみると、BIOMシリーズ独自の円滑な体重移動、すなわち自然な着地感から蹴り出しまでのムーブメントを提供してくれました。そして、5度ほどBIOM Cを履いた時に、「あっ、自分の足の一部みたい!」と思う瞬間があり、それからはいつものECCOシューズ同様に快適な履き心地をキープしてくれるようになりました。さらにソールユニットのヒール部分を上方に大きく巻き上げることで、比類なき着地時の安定性を確保していることが理解できます。
今回ピックアップしたBIOM Cは前述のように、厚手で上質なカーフレザーをアッパーに使用していたために、足なじみに若干の時間を必要としましたが、一度足にフィットしてしまえばこっちのもの。使用している皮革自体が丈夫なので、このフィット感を長らくキープしてくれそうです。あとこのBIOM Cでは5回目くらいにシューズと足が一体化するような感覚を覚えましたが、これはイギリスやフランスの老舗ブランドのドレスシューズと比較したらかなり早いほう。自分の経験では足に靴がなじむまで、2年ほどの月日を必要とした1足もあったくらいですから(笑)。あと、このBIOM Cのアッパーレザーはシューポリッシュで磨いたりするのも面白いでしょうね。独特の艶や色味を楽しむことができると思いますよ。